『ストーナー』

晴れ。

書き物月間を乗り越えたので、積読解消に勤しむ。

教師とは、知の真実を伝える者であり、人間としての愚かさ、弱さ、無能さに関係なく、威厳を与えられる者のことだった。知の真実とは、語りえぬ知識ではなく、ひとたび手にすれば自分を変えてしまう知識、それゆえ誰もその存在を見誤る心配のない知識のことだった。(131)

今は研究の計画を立てる段階であり、この段階がいちばん楽しかった。何本もある探求の道筋を一本に絞り込み、いくつかの有望な戦略を切り捨て、未踏の可能性がはらむ謎や不確定要素を分析し、選択の結果を予測し・・・。(140)

その秋の授業日程は、ことのほかひどいものだった。学部一年の英作文四講座が、週六日の離ればなれの時間帯に配されていた。(・・・)新年度最初の授業の日、ストーナーは早朝の教官室で、きれいにタイプ打ちされた日程表をふたたび眺めた。(・・・)日程表を見て、鋭い怒りが込み上げる。前方の壁を数秒にらみ、授業日程にもう一度目をやってから、自分に向かってうなずいた。日程表をいっしょに来た講義概要もろともくずかごに投げ入れ、隅にある書類棚のところまで行く。最上段の抽斗をあけて、茶色の紙ばさみの束をぼんやり眺め、ひとつを引っ張り出した。はさまれた紙をぱらぱらめくり、そうしながら音の出ない口笛を吹く。それから、抽斗を閉め、紙ばさみを脇にはさむと、教官室を出て、最初の授業に向かった。(・・・)しばし呼吸を整えて、ストーナーは話し始めた。「すでにこの講座の指定図書を購入した諸君は、書店に買い戻してもらったほうがよいかもしれない。登録の際に全員に配ったシラバスは無視してくれ。今後も使う予定はない。この講座では課題に対して違う切り口を試みるつもりだから、別の指定図書二冊を購入してもらうことになるだろう」ストーナーは学生たちに背を向け、チョークを一本手に取って、しばし高く掲げたまま、席に座った学生たちの抑えたささやきや衣ずれの音から、いきなりこの授業の手順になじんできたことを耳で確かめた。「われわれの指定図書は(・・・)ルーミスとウィラード編『中世英文学の詩と散文』、そしてJ.M.H. アトキンズ著『英文学批判ー中世の位相』だ」受講生に向き直った。(・・・)「この講座の主目的は、ルーミスとウィラードのアンソロジーの中に見出せるだろう。われわれはまず、三通りの目標を掲げて、中世の詩と散文の実例を見ていく。最初に、それら自体を有意な文学作品として。第二に、英文学の伝統的な様式と方法の原初的例として。そして、第三に、今日にまで現実的な価値と応用の広がる話法問題の修辞的、文法的な解決策として」ほぼ全員が筆記を終え、顔を上げるころ、知的な笑みの一団はやや緊迫した面持ちになり、何人かがおずおずと手を挙げた。ストーナーはその中の、比較的はっきり挙手した眼鏡に黒っぽい髪の長身の青年を指名した。「先生、これは一般英語一の第四班の授業ですよね」(261-63)